テクニカル分析の基本⑤ 移動平均線

テクニカル分析
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重要度 ★★

移動平均線(MA)をチャートに表示させているトレーダーは多いでしょう。

移動平均線を見れば、今現在の相場のトレンド方向と現在地がよく見えてきます。

パッと見て移動平均線が上を向いていれば上昇トレンド、下を向いていれば下降トレンドと判断しても問題ありません。

また移動平均線を利用したエントリー方法も定番のものとして紹介されることが多いですね。

しかし、それらのエントリー方法は実際ちゃんと使えるのか?

移動平均線をどのように実戦で活かせばいいのか?

今回はそのあたりを中心に解説を行っていきたいと思います。

移動平均線はトレンドを追いかけるもの

さて結論から言いますと、私は移動平均線はそれほど重視していません。

一応表示はさせていますが、200MAの1本だけです。

MAとはMoving Averageの略ですが、皆さんがお使いのトレードツールも5MA、25MA、75MAなど3本ぐらいの移動平均線がデフォルトで表示されているかと思います。

例えば5MAであれば、5本のローソク足の終値を平均数値化したものになります。

 

注意していただきたいのは移動平均線はローソク足が出来上がってから動くので、いち早くトレンドの転換を知るためのものではありません。

 

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例えば移動平均線が上向いてから買いエントリー、なんて場合はけっこう遅いタイミングになるエントリーだということを覚えておいてくれ。

私の場合は移動平均線が買いサインを出す前に買いエントリーをしたりもしますし、移動平均線のみをエントリーの判断にすることはありませんが、一般的な移動平均線を使ったエントリー方法を紹介しましょう。

移動平均線のゴールデンクロスと向きを確認する

下降トレンドだったチャートが上昇トレンドに転換する時、移動平均線は短期MAが長期MAを必ずクロスして上抜きます。

 

マネックス証券より引用

これをゴールデンクロスと言い、買いサインとして広く紹介されています。

例えばオレンジが5MAで緑が25MAだと思うとイメージが湧くでしょうか?

ちなみに反対はデッドクロスで売りサインとされています。

マネックス証券より引用

このゴールデンクロスとデッドクロスは非常に有名なエントリー方法です。

では、果たしてどれほど期待値のあるトレードになるのか?

これは検証材料としてはとてもいい教材になります。ぜひやってみてください。

パーフェクトオーダーによるエントリー方法

パーフェクトオーダーとは全ての移動平均線が上向き(下向き)になっている状態です。

わかりやすく言えば例えば、下降トレンドから相場が反転しゴールデンクロスが起きます。

その時に5MA(短期MA)、25MA(中期MA)、75MA(長期MA)の順に移動平均線が表示されている状態です。

この状態で買いエントリーを行う方法です。

上昇トレンドが明確に発生した状態でエントリーを行うため、その上昇トレンドが長く続く場合は大きく勝てる手法になります。

上のチャートでは、1つ目の水色のボックスの部分でパーフェクトオーダーが成立し、エントリーを行います。

利確位置は短期MAが下を向きだし、中期MAと重なりデッドクロスした辺りで行います。(※売りエントリーとなっていますが、利確の間違いです)

このユーロ円チャートでは500pipsほど取れるケースとなり大成功と言えるトレードになるでしょう。

ただし、先ほども説明した通り移動平均線を見てからのエントリーは遅いタイミングになることも多く、今回のケースのようにトレンドがそこそこ続かなければ負けトレードになり得るので注意しましょう。

グランビルの法則は単体では使えない

使えないものを紹介するのもなんですが、なぜ使えないという考えなのかに注目してください。

移動平均線を使ったエントリー方法としてもう1つ有名なものが、グランビルの法則になります。

マネックス証券より引用

買いシグナル

  • 買①移動平均線がある程度の期間下降した後で横ばい状態になるか、或いは少し上昇基調に転じた時に、株価がその移動平均線を下から上に突き抜けたとき。
  • 買②移動平均線が上昇トレンド中に、株価が移動平均線を下抜けたとき。
  • 買③株価が移動平均線よりも大きくプラスに乖離した後、株価が下落したが移動平均線まで落ちずに再度上昇したとき。
  • 買④株価が下降基調の移動平均線の下にあって、移動平均線より大きく乖離したとき。(自立反発が期待できる)

売りシグナル

  • 売⑤移動平均線がある程度の期間上昇した後で横ばい状態になるか、或いは少し下降基調に転じた時に、株価がその移動平均線を上から下に突き抜けたとき。
  • 売⑥下降トレンド中の移動平均線を株価が上抜けたとき。
  • 売⑦株価が移動平均線よりも大きくマイナスに乖離した後、株価は上昇したが移動平均線まで届かずに再度下落したとき。
  • 売⑧株価が上昇基調の移動平均線の上にあって、移動平均線より大きく乖離したとき。(自立反落する可能性がある)
マネックス証券より引用

とてもわかりやすい資料ですが、はっきり言ってエントリーの根拠としては曖昧なものが多く、非常に使いづらいと思います。

 

①は下降トレンド真っ只中で、まだまだ下がるリスクがある。

②は上昇トレンドに変わっているのでしょうか?まだ下落のリスクも強いように見えます。ただし損切り位置は直近の安値など浅めに設定できそうなので、MAが上向きならいいエントリーにはなり得ます。

③はまだマシかなと思います。大きな上昇の初押しはけっこう狙い目です。ただしMAの上で止まるかは不明です。

④は反発の根拠が薄すぎます。ただ移動平均線から乖離しすぎ、というだけなのですがただの根拠のない逆張りになりえます。

⑤はダウ理論的にはまだ上昇トレンド中で入りづらいでしょう。ネックラインか押し安値を割るまでは入らないのがセオリーです。

⑥はいいエントリーポイントでしょう。③の押し安値を割っていれば文句なしですね。チャートパターンのヘッドアンドショルダーの記事で紹介した通りですね。

⑦は売りエントリーとしては遅すぎます。すでにある程度下落した後ですので、まだまだ下がると思うのは危険です。

⑧は④と同じですが、移動平均線からの乖離という根拠だけではリスクが高いです。移動平均線の位置など無視するような狂ったような上昇がある場合は大変なことになってしまいます。

 

ただそのままでは使えないよ、ということですね。

 

というわけで、グランビルの法則1つで戦うのは現実的ではないでしょう。

ただしこれは私の個人的見解であって、グランビルの法則をメイン手法として勝っているトレーダーもいるでしょう。

そういった人たちを否定するものではなく、グランビルの法則も検証を重ねて期待値の高いところだけをピックアップして使えば勝てるのだろうとは考えています。

移動平均線は相場参加者が意識しているかどうかが重要

移動平均線ピッタリでチャートが反応したりしなかったりするわけですが、それは相場参加者がその移動平均線を意識しているかどうかによる結果の可能性があります。

もちろん、ピッタリ反応したから100%意識されているとも言い切れません。

もし明らかに意識されているような動きがあれば、今後もそのMAがサポートラインになったりレジスタンスラインになる確率も上がるでしょう。

 

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結局相場を動かしているメインプレーヤーは機関投資家などの大口だ。

彼らがMAを目安にエントリーや利確を行っていれば、MAが機能しているように見えるし、そうでなければ意味のないものにしか見えないだろう。

最後に私が200MAだけはなぜ使っているのかを紹介したいと思います。

200MAはもっとも意識されている?

チャートには月足、週足、日足、分足など様々な時間軸が存在しますが、もっとも相場参加者が見ているチャートが日足チャートだと思います。

これは裏付けるデータがあるわけではありませんが、個人投資家も機関投資家もその日その日でトレードプランというものがあると思います。

日足チャートでの200日移動平均線というのは、およそ1年間の平均ということで注目されていると言われています。

おそらくですが、日足の200MAがあらゆるMAの中でもっとも注目されているのではないかなと思います。

私は日経平均先物の取引をけっこう頻繁に行うので、200MAの位置と向き、また価格がMAに近づいた時の反応などにはけっこう注目をしています。

ちなみに1時間足の200MAも体感的にはけっこう機能するように思います。

こちらは日経平均先物の日足チャートです。

2016年9月~2020年9月あたりのけっこう広めのチャートに200MAを表示させています。

けっこうMAが意識されている印象は持ったでしょうか?

同じチャートに今度は200MAが上向きの期間を赤いBOX、下向きの期間を水色のBOXで囲いました。

先ほどのグランビルの法則の買いサイン②や③も、この200MAなら割と使えるのではないかなと思います。

つまり、200MAが上向きの時はMAに引き付けて買いエントリー

200MAが下向きの時はMAに引き付けて売りエントリーという戦略です。

 

さてお気づきかと思いますが、チャート右側の暴落は2020年のコロナによる暴落です。

1番最初に騒がれた時は未知なるウイルスということで本当に相場はパニック売りを起こしました。

 

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24000円あった日経平均が16000円割れまで暴落したからね。

移動平均線からの乖離を見ても、これがいかに異常な値動きだったかがよくわかる。

グランビルの法則の逆張りにならって日経平均21000円あたりで買いを行っていたら、かなりの損失になっていたでしょう。(もちろんその後は暴落前を上回る大きな上昇があったので、持ってれば助かりますが…これにも驚かされました。)

 

ということで、最後の水色のBOXの中だけは売り戦略で考えると大負けをします。

移動平均線の戦略というのは長いトレンド相場で有効であり、急な値動きに弱いことがよくわかる例です。

 

2020年のコロナによる暴落、その後の急上昇はまさしくチャートパターンの記事で紹介したV波動やスパイクの動きですね。

テクニカル分析の基本④ チャートパターン
チャートパターンにはトレンドの反転のサインとなるものと、トレンドの継続を示すものが存在する。反転のサインとなるものにはダブルトップやヘッドアンドショルダーなどがあげられ、トレンドの継続を示すものはトライアングルやフラッグがあげられる。

 

ですから移動平均線をメイン戦略として採用したいのであれば、こういった弱点となる動きについては最大限警戒をしなければいけません。

移動平均線の使い方まとめ

移動平均線は多くの人が使っていますが、それ単体で使うにはなかなか簡単にはいかないということがおわかりいただけたでしょうか?

いつもの事ながら、ダウ理論や水平線やエリオット波動やチャートパターンといった他のテクニカル分析と併用して使うことで移動平均線も効果を発揮するものだと思います。

あくまでも移動平均線はエントリーの根拠の1つとしましょう。

グランビルの法則も全く使えないというわけではなく、他のテクニカル分析で買いエントリーを考えている時にグランビルの法則的にも買いエントリーを示していれば、エントリーの後押しになるでしょう。

 

 

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